【腎疾患の現状と細胞治療の可能性】
ほとんどの腎疾患は慢性腎不全に移行する可能性があり、主な原因は糖尿病や高血圧といわれています。
現在、腎疾患に対する治療には透析やステロイドホルモンなどの免疫抑制療法、アンギオテンシン変換酵素阻害剤やアンギオテンシン受容体拮抗薬などの降圧剤による治療が行われていますが、これらは疾患の進行を遅らせるだけにとどまっており、腎不全からの回復は腎移植以外に方法が確立されていません。さらに、年に1万人のペースで罹患者が増え続けており、慢性的なドナー不足の問題や透析の高額な治療費などにより十分な治療を受けることができない患者が多くいます。
しかし最近では、骨髄由来間葉系幹細胞を急性腎不全モデルラットに投与することで症状が改善されることが確認されており、幹細胞とそれから分泌される因子の同定や作用解明について研究が進められています。
【現在、治療や動物による研究が行われている機関】
◆ 岡山大学 ◆ 名古屋大学
◆ 東京大学 ◆ 大阪大学
【名古屋大学の研究成果】
難治性腎疾患の各種実験動物モデルに、培養した脂肪由来間葉系幹細胞を投与することにより、治療に有効であることが確認されています。
【東京大学の研究成果】
腎不全モデルマウスを使用した動物実験で、腎臓に1匹あたり幹細胞 1 万個の移植を行ったところ、移植前は腎不全モデルマウスの幹細胞は健常マウスに比べ約 3 割に減っていましたが、移植して 7 日後には血液検査等のデータがほぼ正常値に戻っていることが確認されています。幹細胞が傷付いた腎臓の細胞を修復したためと考えられ、この結果から腎不全の治療への応用が期待されています。
※ 幹細胞に関する様々な情報は、ヒト幹細胞情報化推進事業(SKIP:https://www.skip.med.keio.ac.jp/)や 日本再生医療学会雑誌、各大学や施設の論文及び記事などを参照しております。