【皮膚疾患の現状と細胞治療の可能性】
創傷の原因には外傷、火傷、血液循環不良、糖尿病など様々な要因があります。重篤な皮膚創傷の場合は皮膚移植が通常行われますが、広範囲におよぶ火傷などを治療する際には自家移植片が足りず、同種移植片や異種移植片を使用しても拒絶反応により最終的には自家移植片が必要となります。そこで現在ではヒト皮膚幹細胞を単離・培養して培養表皮シートを作製し、重度熱傷の治療に応用されています。
他にも、皮膚の損傷部位に幹細胞を集めることにより傷の治癒が早まることがわかっており、特定の部位へ幹細胞を集める技術の開発やアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患に対する幹細胞治療法への応用研究が進められています。
【現在、治療や動物による研究が行われている機関】
◆ 大阪大学 ◆ 名古屋大学 ◆ 東京医科歯科大学 ◆ 東北大学
◆ 長崎大学 ◆ 兵庫医科大学 ◆ 近畿大学薬学総合研究所
【長崎大学の研究成果】
マウスを使用した動物実験では、多くの骨髄由来幹細胞が創傷治癒過程に積極的に関与していることが確認されました。また、皮膚硬化症モデルマウスに骨髄由来幹細胞を全身に注入すると、炎症細胞制御だけでなく、皮膚の特に創傷治癒の繊維芽細胞の発現と増殖が促進されることも明らかになってきています。
【兵庫医科大学の研究成果】
アトピー性皮膚炎の急性期および慢性期のモデルマウスにおいて、幹細胞を投与すると皮膚の症状が改善される傾向が確認されました。また、皮膚組織切片についても有意に炎症系細胞の浸潤・活性化を抑制していることが示されました。
※ 幹細胞に関する様々な情報は、ヒト幹細胞情報化推進事業(SKIP:https://www.skip.med.keio.ac.jp/)や 日本再生医療学会雑誌、各大学や施設の論文及び記事などを参照しております。